ゆみしま日記

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zoom RSS ジルオール インフィニットSS アモール・パトリアエ(祖国への愛)第2話

<<   作成日時 : 2005/12/21 22:31   >>

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「アモール・パトリアエ(祖国への愛)」第2話

そうしていつもの日々が始まり、依頼をこなす毎日だったが、
エレンディルには一つ気になることがあった。ベルゼーヴァである。
理由はよくわからないが、彼は自分のことを気にかけてくれていた。
「無限のソウルを持つ者」色んな人が自分のことをそう呼ぶが、
彼女自身、それが一体何なのか、どういう意味を持つのか、
はっきりとは分かっていなかった。以前ゼネテスが、目の前の人間を
殺すのでもなく助けるのでもなく、第三の選択をすることが出来る
のが無限のソウルではないか、と言ったことがあったが、その言葉が
一番わかりやすかった。だが、自分にそんなことができるかどうかは
わからないし、今回のアンギルダンの件を考えてみても、とても
自分に特別な力があるとは思えなかった。
ベルゼーヴァは、自分が「無限のソウルを持つ者」ということで
何かにつけて期待してくれたようだ。彼は「人類の革新」を
果たすため、と事あるごとに語っていた。自分には彼なりに
気をかけてくれたようだが、アンギルダンに対する冷酷な
仕打ち、4将軍を凡人呼ばわりする態度、その辺りの心情が
理解できなかった。また腹も立った。確かに彼は若くして
宰相になり、政治・軍事とも事実上掌握している。天才的な
頭脳を持ち、戦いでも2刀流、魔法も強いという。
確かに優秀だろうが、しかし、冷淡な物言いや態度はどうも
引っかかった。アンギルダンの言葉がよみがえる。

「人の和を信ぜずして、帝国に未来はないぞ、ベルゼーヴァ卿!」

 そのアンギルダンがベルゼーヴァに処刑されてしまったのは
なんとも皮肉なことだが、エレンディルはこの言葉が忘れられ
なかった。そう、その通りだ。人を信じなければ、未来はない。
信頼関係がなければ、国を治めることなんてできない・・
なのになぜ、ベルゼーヴァはあんな態度を取り続けるのだろうか。
アンギルダンが憂いていたことが現実にならなければいいけれど・・。
アンギルダンが心配していたディンガルの未来。彼が命を賭けて
守ろうとした国。副官として戦いに参加して、エレンディルは
今、新たな故郷を得たような気持ちになっていた。育ったのは
小さな村、オズワルドだ。しかし母さんも行方不明になり、村も
人の気配がなくなって廃墟と化したらしい今、第2の故郷は
ここディンガルなのかもしれない。ディンガルのこれからを
思うと、エレンディルは不安な気持ちを隠せなかった。
ベルゼーヴァに関しては謎だらけだ。何を考えているのか、
ディンガルをどうするつもりなのか、どう思っているのか、
いつか聞いてみたいとエレンディルは思った。

そうして時は流れていく。世界が不安で覆われ、エルファスが
救世主として、人々の心を確実に掴んでいた。その頃、新たな
仲間がパーティに加入した。かつての帝国内務統括にして
玄武将軍ザギヴである。ザギヴは魔人マゴスに体を乗っ取られ
かけたのを、エレンディルやオルファウスが救ったのだ。
オルファウスの要請もあり、ザギヴは魔力を弱めたうえで
エレンディルたちと旅をすることになった。
魔力を弱めているとはいえ、ザギヴの魔法は強力で、すぐに
頼もしい戦力となった。エレンディルは、気位の高いザギヴが
冒険者中心のパーティになじむのか心配していたが、仕事の重圧
から解放されたザギヴは思ったよりも気さくで、すぐにパーティに
溶け込んだ。もちろんそれはデルガドやナッジの気遣いあって
こその話だったが。それでもマゴスの復活を恐れるザギヴは、
時折り不安げにたたずんでいた。

 ベルゼーヴァに直接疑問をぶつけたのは、そんな頃だった。
ディンガルの宿屋に泊まることにして、食事が終わったあと、
ザギヴは散歩と言って宿屋を出て行った。エレンディルは
鍛冶屋に行って武器の手入れを頼もうと、一人ディンガルの
城下を歩いていた。夕暮れの美しい季節。もう秋だ。
エレンディルは鍛冶屋に行こうとしたが、美しい夕暮れに
ひかれて、暗くなる前に広場のほうへ散歩してみようかと
広場に足を向けた。

「君か。こんなところで何をしている。」
広場のソリアス像の前で出し抜けに声をかけられて振り返ると、
城門から出てきたのだろう、部下を従えたベルゼーヴァがいた。
ぎょっとした表情が顔に出たらしい。ベルゼーヴァはかすかに
皮肉な笑みをたたえて言った。
「君はどうも私を見ると、不安と警戒心を抱くようだな。安心するが
いい。この前も君に言ったが、別に君をどうこうするつもりはない。
確かに闇の神器を巡って君とは敵対状態だが、ネメア様の意思に
反して君を捕らえたり処刑したりはしない。」
処刑、の言葉を聞いてエレンディルはふと、以前から聞きたかった
ことを思わず口にしていた。
「ベルゼーヴァさんは、ディンガルという国を愛しているんですか?」
ベルゼーヴァはあまりに突飛な質問に、やや驚きを隠せない様子だった。
「君は・・実に面白い人間だな。私に向かってそんなことを聞いたのは
君が初めてだ。」
しまった、とエレンディルは思ったが後の祭りだった。もう少し上手な
聞き方があっただろうに、なんてバカな聞き方をしたんだろう。
これじゃいつもの冷淡な笑いで皮肉を返されて終わりだ。
そう思ったが、ベルゼーヴァは意外な言葉を返した。
「残念ながら、私は愛というものがどんなものかを知らない。
君にも私の生い立ちは多少語ったと思うが、何せ私の肉体の父、
ウリア・ベルラインも母もすぐに死んだ。
魂の父はシャロームだ。君も奴の性格は知っているだろう。
育ての親はあの妖術宰相ゾフォルだ。邪眼帝バロルは、私を
後継者にしようと目論んでいた・・。」
ここで言葉を切って、ベルゼーヴァは遠巻きに様子を伺っていた
部下たちに先に行くように言ってから言葉を続けた。

「愛がどんなものかを教えてくれるような人物がこの中に
いるとは、君も思わないだろう。こんな環境で育った私に
愛など問われても、君が満足いくような答えは返せん。」
気のせいか、ベルゼーヴァの表情には翳りがあるように
思えた。寂しさと言ってもいいかもしれない。
エレンディルはベルゼーヴァの言葉を聞いて、さっきとは
別の後悔の念を抱いた。ベルゼーヴァの生い立ちを知って
いながら、こんな質問をするんじゃなかった。しかし、
ベルゼーヴァが自分の生い立ちを話してくれたのも、今の
ように、寂しげな様子を見せてくれたのも意外だった。
それで、つい別の問いもしてみたくなったのである。
今ならベルゼーヴァも色々なことに答えてくれそうだった。
「あの・・どうして私に色々話してくれるんですか?
そのつもりはないけど、神器を集めている以上、私はネメア
さんの敵になるんでしょう?そんなに色々しゃべっちゃって
いいんですか?」

 今度は苦笑を浮かべながらベルゼーヴァは言った。
「今の君ごときに重要なことを話しても大勢に影響はない。
それに、無限のソウルを持つ者には私も何かを期待をしたく
なるのだ。ネメア様ですら、君には特別な力を感じている。
剣技の素晴らしさや、魔力の強さなどといった単純なものでは
ない。人を導く力だ。ネメア様以外にそんな力を持つ者がいる
とは以前は信じられなかったが、今は信じてもいいかもしれない。
さて、話が長くなったな。そろそろ失礼する。私も忙しいのでね。
また機会があれば、執務室を訪ねてくるといい。」
そう言ってベルゼーヴァは立ち去ろうとしたが、ふと足を止めて
言った。
「・・・先ほどの問いだが、君なら愛がどんなものかを教えて
くれるのかもしれないな。」
エレンディルは驚いてベルゼーヴァをじっと見つめた。
ベルゼーヴァはまたいつもの皮肉な笑みを浮かべて言葉を重ねた。
「変な誤解をしないでくれ。祖国への愛は、君も持っているの
だろう?いつか聞かせてくれ。この間は聞きそこなったが、
無限のソウルを持つ者の境遇を。ではさらばだ。」
そう言ってベルゼーヴァは部下と共に去っていった。

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