ゆみしま日記

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zoom RSS ジルオール インフィニットSS アモール・パトリアエ(祖国への愛)第3話

<<   作成日時 : 2005/12/22 22:40   >>

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「アモール・パトリアエ(祖国への愛)」第3話

 「エレンディル?」
ぼんやりとした頭を現実に引き戻したのはザギヴの声だった。
「ザギヴ・・。いつからそこにいたの?」
「ちょっと前からよ。ベルゼーヴァ様に見つかったら大変と
思って、陰であなたたちの話を聞いていたの。ごめんなさい。
でも、私は生死不明、ってことになってるから、あんまり
目立つのはまずいのよ。」
「ううん、それはいいんだけど・・。ねえ、ザギヴ、ちょっと
時間あるかなあ。聞きたいことがあるんだけど・・」
ザギヴはその誘いを半ば予感していたような様子だった。
「ええ、いいわよ。なかなかゆっくり話す機会がなかった
ものね。」
2人はライラネート神殿まで歩きながら話した。夕暮れも
次第に夜の色に変わりはじめていた。

 「で、話って言うのは、ベルゼーヴァ様のこと?」
ザギヴがおもむろに口を開いた。
「鋭いなあ・・。まあ、そうなんだけど・・。」
「ベルゼーヴァ様の生い立ちなら、おっしゃっていたとおりよ。
ゾフォルたちの企みによってベルゼーヴァ様は生まれた。
実のご両親はベルゼーヴァ様が生まれてすぐ亡くなって
しまって・・」
ザギヴは自分の身の上と重ね合わせたのか、辛そうな表情で
エレンディルを見た。
「ザギヴ・・。怒らないでほしいんだけど、聞いてもいい?」
おそるおそるエレンディルは尋ねた。
「ええ、いいわよ。そんなに恐がらないでちょうだい。なあに?」
「・・あの〜、もしかしたらザギヴはベルゼーヴァさんのことが
好きなのかなあ、と思って・・・」
絶対に怒られると思ったが、ザギヴは怒るそぶりも見せず、静かに
言った。
「・・そうねえ・・。どうかしら。少なくとも、ベルゼーヴァ様は
私のことを警戒しているし、マゴスに乗っ取られかねない、危険で
弱い人間だとしか思ってないでしょうね。」
「そんな・・」
「いえ、本当のことよ。だから私がマゴスに乗っ取られかけて
力を抑えきれなかった時、すぐに私の捜索を打ち切ったのよ。
いよいよマゴスに乗っ取られてしまいそうだし、これで表舞台
から消えてくれて好都合だと思ったのでしょうね。ネメア様の
足を引っ張るような人間はベルゼーヴァ様には必要ないのよ。」
「ザギヴはどう思ってるの??」
「・・・好きと言っていいのかわからないけれど・・私は
ベルゼーヴァ様がうらやましかった。憧れてた。
私以上に不幸な生い立ちなのに、あの方は強い意思でその
逆境をはねのけて、今の地位を得た。全ての苦しみも悲しみも
押し返してしまう強さがあの方にはあるのよ。
みんなはベルゼーヴァ様のことを冷酷な人間だというけれど、
それは強さゆえのことよ。生い立ちを知っている私には、
ただ冷たい人だなんて言えない。私もあんなふうに強ければ
よかった。これって、ベルゼーヴァ様を好きってことかしら?」
逆に問われて、エレンディルは戸惑った。
「・・どうだろう・・。ごめんね、変なこと聞いて。」
「いいえ、いいのよ。逆にあなたはベルゼーヴァ様のこと、
どう思う?恋愛感情とかじゃなくって、人間としてよ。」
「そうだなあ・・。まあ、気になるからザギヴにこうして聞いて
みるのかもしれないよね。なんだかよくわからない人だな、と
思って。」
「私から見れば、ベルゼーヴァ様はあなたを大切に思っていることは
間違いないわ。」
「そう??確かに、気にかけてくれてはいるみたいだけど・・
でもそれは、私が無限のソウルを持つ者、だからだよ。
私にもよくはわからないけど、人類の革新に役立つらしいから、
ベルゼーヴァさん風に言うと「利用価値があるから気にかけてる」
ってとこじゃないかな。
ベルゼーヴァさんも言ってたけど、愛とかじゃないよ、きっと。
愛を知らないなんてかっこいいこと言ってたし・・」
「まあ、宰相閣下に向かってその口の利き方、勇気あるわね。」
「ええっ!?別に悪気があるわけじゃ・・」
「冗談よ。私はもうディンガルの将軍でも内務統括でもないもの。
きっとそういうところもベルゼーヴァ様は気に入ったのね。」
くすくす笑いながら、ザギヴは面白そうにエレンディルを
見つめた。
「ああいう方だから、誤解されやすいけど、ベルゼーヴァ様は
ディンガルの行く末を気にしてらっしゃるわ。それに、もっと
広い、この世界の行く末も。だからネメア様に心酔してらっしゃる
のよ。何とかしてこの世を正しい方向に導こうとしてる・・。
贔屓目かもしれないけど、それは確かよ。」

「なるほど・・。そうかもしれないけど、きっとそのための
方法が私が思うこととは違うんだろうね。だから敵対関係に
なっちゃうのかなあ・・。難しすぎてよくわからないけど。」
エレンディルは、アンギルダンのことを思い出して、そう
つぶやいた。
ザギヴはその言葉を聞いて、伏目がちに聞いた。
「エレンディル・・・。アンギルダン将軍はいい人だった?」
エレンディルは返答に困ったが、正直に答えた。
「・・いい人だったよ。副官になれてよかった。」
「そう・・。今更言っても遅いけど・・。ごめんなさい。
アンギルダン将軍を処刑したこと、あれが最良の選択だったかは
私にも疑問なの。あの時のベルゼーヴァ様の判断は正しかったの
かしら・・。でも、完全に間違っていたとも思えない。
それだけ、その影響力を恐れていたということね・・。
でも、そんなことを言っても始まらないわね。エレンディル、
あなたにとってはとても大事な人だったでしょうから・・」
「大事な人だったよ、とっても。でも、ザギヴ、もういいの。
ザギヴはベルゼーヴァさんの命令でああした。それはわかってる
つもりだよ・・。アンギルダン将軍も、たくさんの戦いをくぐり
抜けてきた人。きっと全部わかってるよ。こんな世の中では
簡単に命のやり取りがされてしまうこと。自分も戦争の中の
一つの駒に過ぎないって、分かってたはず。そういう人だよ。」
「ありがとう、エレンディル。」
「・・アンギルダン将軍が守ろうとした、そして愛した
このディンガルのためにも、私は私の信じる道を行くよ。
今はもうディンガルの将軍じゃない、元の冒険者に戻った
身だけれど、この世界に平穏をもたらすために。
もし私が無限のソウルを持つ者なら、その力をこの大事な
世界のために使いたい。そう思ってる。私の大切な仲間、
家族のためにも。」
「・・あなたがそんな考えを持ってくれていて、世界は
幸せね。私も、あなたのおかげで救われた。あとは私次第ね。
私も闘うわ。今はまだ、正直言ってマゴスと立ち向かう自信は、
完全についたわけじゃないの。でも、もう少し、あと少し・・
そんな気がする。」
「大丈夫。みんな、見守ってくれてるよ。月並みだけど、
頑張ろうね、ザギヴ。」
辺りはすっかり日が暮れて、窓には明かりが灯っていた。
「わっ、すっかり日が暮れちゃったね。みんな心配してるかなあ。
もう夕ご飯の時間だよ。ザギヴ、戻ろうか。」
「そうね。話し込んでしまったわね。でも話せてよかったわ。」

あわてて宿屋に戻りながら、エレンディルは思った。
「私の「祖国への愛」、か・・。もしかして、さっきザギヴに
言ったことかもね。この大事な世界のために、仲間のために、
家族のために、無限のソウルを持つ者としてその力を捧げたい。
私の祖国って、この世界全部のことかもしれないなあ・・」
今度ベルゼーヴァに会ったら、そう答えてみようか。
そうしたら、ベルゼーヴァさんも、祖国への愛、を語って
くれるかもしれない。
でも、またわけのわからないことを言っている、と皮肉な笑いで
返されるのかもしれないな・・。ベルゼーヴァさんは難しい話
ばっかりするからなあ。言葉使いも堅苦しいし。とエレンディルは
ため息をついた。
でも、話をするのは結構面白いかも。ベルゼーヴァさんは
よくわからない人だけど、時々意外な反応をするからね。
そんなことを思いながら、エレンディルはザギヴと帰路に
ついた。
ディンガルの空は、闇に染まっていた。
世界はまた、人々の心から来る真の闇に覆われようとして
いたが、まだ一部の人以外はその事実に気付いていなかった。
しかしそんな中でも無限のソウルは輝きを放っていた。
その光が世界の闇と闘うのは、もう少しあとの話である。
誰かのためを願う気持ち、思いやる気持ち。
無限のソウルを持つ者は、周りの人間を変えながら、
輝き続ける・・。

(終わり)

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