ゆみしま日記

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zoom RSS ジルオール インフィニットSS「薄氷・うすごおり」

<<   作成日時 : 2006/01/07 21:39   >>

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「薄氷・うすごおり」
 
 お父様へ
 北の国ではようやく湖に張る氷も薄くなり、春の兆しが見え
始めたそうですね。アキュリュースは暖かいから氷が張るなんて
ことはめったにないけれど、湖に張る薄氷はそれは美しいもの
なんでしょうね。
一度この目で見てみたいものです。おつとめがありますから、
なかなかそうもいきませんけれど。
忙しい旅の途中、心のこもったお手紙をありがとうございます。
今まで、肉親はこの世にいないものと思って過ごしてきた私には
何よりの贈り物です。離れていても心が通じるって、きっとこういう
ことなのだろう、と思います。

 ところで、旅はどうですか?お父様のことですから、あちこちで
色んな方にご迷惑をかけていなければいいのですけれど・・。
親に向かってひどいことを言う娘じゃ、なんて思わないで下さいね。
だってこれはゼネテス様がおっしゃったことなんですもの。
あの方のお言葉をそのままお借りすると、
「とっつあんのことだから、きっと旅先で周囲の人間にえらい
迷惑かけてることだろうな。」
ですって。でも、ゼネテス様を悪く思わないでくださいね。
ゼネテス様はこうもおっしゃったのです。
「でも、とっつあんは、周囲の人間があれこれ、世話を焼かずには
いられなくなるタチなんだよな。周りの人間みんなを惹きつける
魅力があるんだよ。あっ、こんなこと俺が言ったなんて内緒だぜ。
とっつあんの耳に入ったら恥ずかしくてしょうがねえや。」
口止めされていたけれど、お伝えしますね。お父様のことを
そんなふうにおっしゃってくださってとても嬉しく思いました。

 大きな戦いが終わって世界が平和になって、喜ばしいのですけど、
ちょっと物足りないこともあるんです。もちろんお父様がまた
すぐに旅に出てしまったことも一つ。
そして、エレンディル様も旅に出てしまったことも大きいんです。
旅先でお父様に会うかもしれないから、その時はよろしく、って
おっしゃってましたわ。あの方は世界を救った英雄として賞賛
されましたけど、そういうのは苦手みたいで。自由に今までどおり
きままに冒険者としてやっていきたいようです。そんなところは
お父様とよく似ていますのね。エレンディル様は女性ですけれど。
だけど旅の途中にアキュリュースに寄ってくださることもあるし、
私ももっと修練しないといけませんから、そんなことばかりは
言っていられません。アキュリュースだけでなく、もっと広い
立場から、水の巫女として私に何が出来るのか真剣に考えて
いるところです。

 だけどまだまだです。ずっと水の神殿で育ってきた私は、やっぱり
世間知らずなんです。いっそお父様のように旅に出て修行をしたい
ですわ。どうやら神官長たちは、私がいつそう言い出すのでは
ないかと心配しているみたいです。
それは冗談としても、もっといろんな方と交流したいと思っている
のは本当です。今度の戦いを通して私、思ったのですけれど、
いろんな人の心を知ることができないと、世の中に平和はやって
こないものなんですね。私は、自分の周りにいる人たちの心は手に取る
ようによく分かりました。私も同じような考え方をしていたからです。
ですが、皆が皆、神殿の人たちや私のような考えは持っていないことを
知りました。ディンガル軍や、私たちが雇った傭兵たち、他人を
傷つけることで自分が生きる、そんな生き方もあります。

 私は正直に言うと、そんな生き方をしている人たちを軽蔑して
いたかもしれません。自分とは違うそんな生き方を認めることが
できなかったのです。ですが、そういう考え方を改めました。
人はみんなそれぞれの価値観と考え方を持っている。誰が正義で、
誰が悪かなんて簡単に決め付けることはできないのですね。
人を傷つけていないから正義とは言い切れないし、人を傷つける
なりわいの人たちにも、それぞれの信念と正義が存在するのです。
それを気付かせてくれたのはエレンディル様とお父様です。
なんといっても、お父様も将軍をしたり、傭兵をしていたん
ですものね。エレンディル様もお父様も、その行動と生き方で、
正義を決め付けたり、自分と相容れない者を排除したりすることの
愚かしさを教えてくれました。2人には本当に感謝しています。

 だから、ネモ様の謝罪も受け入れることができたんだと思います。
あっ、このお話はお父様にはお伝えしていませんでしたわね。
先日、オルファウス様のところにいるネモ様という方から
大事なお話があるとの連絡を受けて、ネモ様にお会いしたのです。
ネモ様は猫の容姿をしていましたが、正体はウルグの円卓の騎士の
一人で、かつては魔人として恐れられた方だそうです。今はなんの
力もないとオルファウス様はおっしゃっていました。
大事なお話というのは、お母様・・前の水の巫女、ルフェイの
命を奪ったことに対する謝罪でした。ネモ様は何度も私に謝罪
しようとしたそうですが、どうしても言えずに遅くなってしまった
そうなんです。以前の私だったら、魔人と聞いただけで謝罪も
受け付けなかったかもしれません。

 でも、私は謝罪を受け入れました。ネモ様やオルファウス様の
お話を聞くと、魔人と呼ばれる方々にもいろんな事情があり、
いろんな方がおり、ただ単純に全員が悪と言うことはないと思い
ました。むしろ、私たち人間が自然をゆがめていることが原因で
魔人になった方もいるし、善とも悪ともいえず、ただ破壊神ウルグの
使命を果たそうとする方が多いようです。それになにより、
魔人だったネモ様が私にお母様のことで謝りたい、という気持ちに
なってくださったことが嬉しい驚きでした。
もしかしたら、魔人と人間も分かり合えるのかもしれない、と
希望を感じた一瞬でした。お母様は幼い私やお父様や、アキュリュースの
人たちを救うために自分を犠牲にした。それはお母様の何よりの
願いだったのです。お母様は幸せだったはず。今はそう確信しています。

 ずいぶん長いお手紙になってしまいました。お忙しいと思いますので
旅の合間に娘のことを思い出しながら少しずつ読んでくださいね。
まだいたらない娘ですが、次にお父様にお会いできるのを楽しみに
しています。お体には気をつけて、それと、お酒はほどほどに
してくださいね。

 それでは、また。この手紙が届くころには、そちらの薄氷もきっと
解けて、春の息吹が感じられることでしょうね。
                          イークレムン

(終わり)
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